NHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか?abc予想証明をめぐる数奇な物語」[字] …の番組内容解析まとめ

出典:EPGの番組情報

NHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか?abc予想証明をめぐる数奇な物語」[字]

数学界に起きている前代未聞の事態▼京都大学・望月新一教授によるabc予想証明をめぐる激論の背景とは?▼え?たし算よりかけ算の方が簡単?▼VFXで体感!最先端数学

番組内容
2020年春、数学の難問“abc予想”を日本人が証明したというニュースが報じられた。京大数理解析研の望月新一教授の論文「宇宙際タイヒミューラー理論」が専門誌に掲載されたのだ。だが数学界では「証明が理解できない」「いや絶対に正しい」と激論が続く。論理を積み上げれば誰もが同じ答えにたどり着くはずの数学の世界で、なぜ主張が真っ向から対立するのか?前代未聞の議論を追い、数学の魅力に迫る。▼語り・小倉久寛
出演者
【語り】小倉久寛,合原明子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 報道特番

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2020年4月
こんなニュースが駆け巡りました。

「数学の歴史に残る成果。

京都大学の教授が
これまで誰も解くことができなかった

数学の難問を証明しました」。

「abc予想」と呼ばれる
数学の未解決問題を

日本人が証明したというニュース。

論文を書いたのは…

世界的天才として知られてきた
人物です。

abc予想を証明した 博士の…

査読の完了と
専門誌への掲載は

望月博士の偉業が

世界に
正式に認められたことを意味しました。

ところが 数学界始まって以来とも
いわれる 異常事態が起きています。

望月の証明は まだ受け入れられないと
主張する数学者が多数現れ

今も激論が続いているのです。

検証のため開かれた国際会議では
議論百出。

ふだん冷静な数学者たちの間に
怒号が飛び交い

つかみ合いさえ起きかねない
空気になったといいます。

混乱は続き 「数学はどうあるべきか」を
問う議論にまで。

一つ一つ 論理を積み上げていけば

誰もが同じ結論に達するはずの
数学の世界。

完全に正しいとする数学者がいる一方で

なぜ 多くの数学者が
理解できないというのか。

ある数学者は言います。

その答えを知りたければ
abc予想を解き明かしたという…

それを理解しなければならないと。

これは

史上まれに見る異常事態に突入した
数学界を巡る数奇な物語です。

♬~

abc予想の証明を発表した
望月新一博士は

僅か16歳で
アメリカ プリンストン大学に入学。

23歳で博士号を取得した
世界が認める天才です。

一方で 社交的な場には
ほとんど姿を現さない

謎めいた人物としても知られています。

abc予想を解き明かしたという理論は
一体 どんなものなのか。

私たちは 博士に取材を申し込みました。

返ってきたのは
1通の丁寧なメールでした。

「『宇宙際タイヒミューラー理論』が

今までの数学と何が違うのか?
といった問い掛けは

一つの有意義なテーマであり 私自身も
多くの数学者と議論してまいりましたが

意味のある議論
もしくは解説が成立するには

非常に高度な専門知識が必要であり
一般の視聴者どころか

一般の数学者でも
かなり厳しいものがあると

言わざるを得ません。
ご熱意に水を差すようで恐縮ですが

以上の理由により
お断りさせていただきます」。

プリンストン大学時代からの友人…

望月博士が人前に姿を現さないのは
数学に対する集中力と忍耐力を

保ち続けたいと
考えているからだろうといいます。

望月博士は 一体どのようにして
難問を解き明かしたのか。

そして 今 数学界で起きている事態の
背景に何があるのか。

私たちは まず
abc予想とは どんな難問なのか。

それを追うことにしました。

ここに abc予想に長年挑んできた
一人の数学者が暮らしています。

abc予想について教えてほしい
という私たちに それなら まず

「かけ算は簡単だけど
たし算は難しい」ということを

理解すべきだと語り始めました。

何 何?
「かけ算は簡単で たし算は難しい」?

これって私たちの感覚とは
正反対ですよね。

でも 博士は このことがabc予想への
大切な入り口なんだというのです。

皆さんは 素数と呼ばれる数を
ご存じでしょうか。

そうです。 1と
それ自身でしか割り切れない数。

全ての数は この素数のかけ算に
分解することができます。

例えば 126という数は 2と63のかけ算に。

63は 更に7と9のかけ算に。

9は
3×3に分解できます。

博士は
このことをもとに

126は 2と
2つの3と7という

いわば「遺伝子」を持っている
というのです。

(ワルドシュミット)かけ算で生まれた
新たな数の遺伝子は

元の数の遺伝子を
完全に受け継いでいるんです。

皆さん いかがです? 分かりましたか?

今の説明をワルドシュミット博士も
訪れたことがあるという

京都の この場所で
詳しくご説明しましょう。

その美しさで世界的に知られる
苔寺 西芳寺。

ここが「数学の世界」全体を表していると

考えてみて下さい。

地面に生えている無数の苔は…。

そう 一本一本が「数」です。

例えば この苔は4。

4は2×2に分解できますから
その遺伝子は こんな形をしています。

そう 2の位置に
長さ2の枝が生えているんです。

一方 こちらは21。
21は3×7に分解できますから

遺伝子の形は 3と7の位置に
長さ1の枝が生えています。

では ここで
4と21のかけ算をやってみましょう。

答えは 84。

84は2×2×3×7に分解できますから

遺伝子は こんな形になっているはずです。

注目して頂きたいのは 84の遺伝子が

4と21の遺伝子の中身を

そっくりそのまま受け継いでいる
ということです。

いわば 親の遺伝子が
全て子どもに受け継がれている。

これが 数学者が
かけ算は簡単なんだという理由です。

では たし算の場合はどうなるでしょうか。
やってみましょう。

4+21という たし算を
遺伝子で見てみると…。

生まれる子ども25は5×5ですから
遺伝子は こうなっています。

お気付きになりましたか?

たし算では
遺伝子は全く受け継がれていません。

ほかのたし算でも
ほら このとおり。

たし算は かけ算と違って
親の遺伝子からは

子どもの遺伝子の形がどうなるか
全く見当がつかないのです。

これが 数学者が
たし算は難しいという理由なのです。

博士は もう一つ
興味深い話をしてくれました。

数学に 簡単に解くことができない難問が
たくさんある理由です。

それは 数学の世界に かけ算だけでなく

遺伝子を破壊してしまう たし算が
存在しているからだというのです。

博士が黒板に書いたのは…

解かれるまでに
350年もの時間がかかった超難問で

ご存じの方も
いらっしゃるかもしれません。

xのn乗とyのn乗をたし算したものが
zのn乗になるような

xyzの組みは存在するか
という問題です。

けれど 仮に
数学の世界に たし算が存在せず

かけ算だけだったとすると
解くのは一瞬です。

この式を満たすxyzなら

簡単に見つけることができます。

しかし実際には 遺伝子を破壊してしまう
たし算が存在しているため

難問になっているというのです。

この数学の世界に かけ算だけでなく
たし算が存在していることが

数々の難問が生まれる理由になっている
というお話。

ちょっと覚えておいて下さい。

さて 皆さん お忘れじゃないですよね?

私たちは 望月博士が証明したという
abc予想とは どんな難問なのか

それを知りたかったのでした。

あっ それを教えてくれる人を
見つけました。

abc予想を発見した張本人…

2つの数をたしたあとにできる
子どもの遺伝子の形は

親の遺伝子からは全く見当がつかない。

この気持ち悪い事態を
なんとかしたいなあと思った博士。

このこだわりが abc予想へと
つながっていったというのです。

ブラボー。

試行錯誤を繰り返したエステルレ博士。

1985年 ついに
子どもの遺伝子の形を予言する

一つの数式にたどりついたというのです。

え~っと a+b=cの時

子どもの遺伝子の形が
どうなるかというと

c k…?
う~ん これは難しいですね。

式を単純化すると
こうなるそうなんですが…。

まだ 全然分かりませんよね。

一体 この数式が
どんな予言をするというのか

博士は あの遺伝子で考えてみれば
分かるというんです。

a+b=cというたし算を
思い浮かべて下さい。

親の遺伝子の形からは たし算で生まれる
子どもcの遺伝子の形がどうなるか

全く見当がつきませんでしたよね。

それに対し 博士の数式の意味を
ざっくり説明するなら

親であるaとbの遺伝子の情報から
子どもcの遺伝子がどうなるか

ある程度 予言できるというのです。

例えば
ちょっと難しいかもしれませんが

n個の数をかけ合わせた

2のn乗と3のn乗のたし算。

子どもの遺伝子の形がどうなるかなんて
想像もつきませんよね。

でも 博士の数式は
こう予言するというのです。

子どもの遺伝子は
nが どんな数だったとしても

「長さ1の枝しかない」。

または
「長めの枝があったとしても

5の位置にしか生えない」。

その どちらかに限られるはずだ
というのです。

この予言
本当に合っているのでしょうか?

nに いろんな数を入れて調べてみると…。

どうです? 博士の数式の予言どおりに
なっていると思いませんか?

エステルレ博士が偶然見つけた
ちょっと不思議な数式。

ただし この数式が
どんなたし算に対しても

正しい予言をするのか。
それは博士にも分かりませんでした。

そこで博士は これを「abc予想」として
数学界に問いかけることにしたのです。

しかし abc予想は
ほとんど注目されませんでした。

正しくても間違っていても どうでもいい。

いわば たいしたことない予想だと
思われていたからです。

さて ちょうどそのころ
一人の青年が 僅か16歳で

名門 プリンストン大学への入学を
許されました。

東京生まれで 子ども時代のほとんどを
アメリカで過ごした

望月新一青年。

早くから天才を輝かせ
博士課程への進学も19歳で果たしました。

その博士課程での指導教官は
ドイツが誇る数学の世界的権威

ゲルト・ファルティングス博士に
決まります。

ファルティングス博士は
23歳で博士号を取得し 27歳で教授に就任。

32歳でフィールズ賞を受賞した
天才中の天才です。

自らが目指す数学を
学生たちに厳格に求めたといいます。

そんなファルティングス博士を
はじめとした数学者が

大切にしている
現代数学の原理原則があります。

19世紀の数学者 ポアンカレが語った…

一見して全く違うものを
同じと見なすことが

数学の重要な原理原則である
というのです。

これは
一体 何を意味しているのでしょうか。

そもそも数学は

違うものを同じと見なすことで
誕生したといわれています。

例えば リンゴが3つと
杭に3回巻かれたロープ。

この2つは 全く異なる物です。

しかし 人類は
歴史が始まる はるか前に

この2つに全く同じだと思える共通点を
見つけ出しました。

そう 「3」という抽象的な概念の発見です。

数学は こうして始まったと
考えられているのです。

18世紀から19世紀前半にかけては

図形と方程式という異なる概念を

同じと見なす考え方が登場しました。

全然 別ものに見えますが
数学者は この2つに共通点を見いだし

数々の難問を解決していったのです。

19世紀末には
コーヒーカップとドーナツが

同じ形だという考え方まで
現れます。

変形すれば同じ形になるものは
同じものと見なす。

このアイデアは 数学を
飛躍的に発展させることになりました。

♬~

更に 20世紀には
数学の権威 ファルティングス博士らが

1 2 3といった数の集まりと
曲線を

同じものと見なす考え方を
推し進めます。

これも たくさんの難問の解決に
つながりました。

この現代数学の原理原則を

望月青年は やがて
打ち破ろうと考えることになるのです。

ある日のことでした。

これまでの数学にとらわれないためには
どうすればいいか。

友人との会話の中で望月青年は
こんなことを語ったといいます。

ちょうどそのころ。

数学界を大きく揺るがす
大発見のニュースが駆け巡ります。

あの たいしたことない予想だと
考えられていた abc予想が

もし 正しいと証明できれば
まるでドミノ倒しのように

数々の難問が一気に解けるという
驚くべき事実が発見されたのです。

♬~

実際 abc予想が正しいことを
前提にすると

解かれるまで350年かかった あの難問も

あっという間に
証明できてしまうといいます。

なぜ abc予想に
それほどの力が備わっているのか。

その理由を またざっくりとですが
説明すると こうなります。

cが
a+bに等しかったことを思い出せば

式の左には aとbのたし算が

右には
aとbのかけ算が現れていることが

分かりますよね。

ここで思い出して下さい。

数学の世界に かけ算だけでなく

遺伝子を破壊してしまう たし算が
同時に存在していることが

数々の難問を生んでいるというお話を。

実は abc予想には

数学の世界に混ざり合うように
存在している たし算とかけ算を

いわば 巧みに分離する力が備わっている
というのです。

abc予想が証明できれば
数々の難問も解決できてしまう。

こうしてabc予想は 最も重要な未解決問題
と呼ばれるようになったのです。

このニュースは 望月青年が学んでいた
プリンストン大学にも届きました。

シンプルな問題でありながら
想像を上回る奥深さがある。

abc予想は まさに望月青年が解きたいと
語っていたような

根源的な難問だったことが
分かったのです。

同じ頃
指導教官のファルティングス博士が

望月青年の博士論文のテーマを
決めようとしていました。

望月青年は 早くも
abc予想に挑むことになったのか。

abc予想が
博士論文のテーマとならなかったことを

望月青年が残念がったのかどうかは
分かりません。

しかし 博士課程修了後
望月青年は意外な行動に出ます。

引く手あまただった
欧米の大学のポストには目もくれず

少年時代に数年間だけ過ごした
日本に帰ることを決めたのです。

なぜ 数学の本場とされる欧米から
距離を置く道を選んだのか。

そこでは見つからない
新たな数学を探そうと思ったのか。

当時 目指したいと思っていた人物像を
こう書いていました。

そして もう一つ 望月青年の胸の内を
うかがい知るためのヒントがありました。

それは 博士論文の最後に記された
将来挑戦したい難問のリスト。

どれも abc予想の証明の
重要なステップとなるものばかりでした。

いきなり最も重要な未解決問題として
浮上したabc予想。

1990年代以降 数々の数学者が
証明へと挑み始めました。

その一人が…

パーティーを愛してやまない
数学者でした。

シュピロ博士の戦略は abc予想の
aやbといった数を曲線に置き換え

それが交わることを示せれば

abc予想が正しいと証明したことになる
というものでした。

2つの曲線は交わるのか。

苦難の日々を経た ある日のことでした。

シュピロ博士は ついに

2つの曲線が必ず交わることを
証明したと確信します。

そして 親友の数学者の誕生日に合わせて
開かれた国際会議

そこで証明を発表しようと
思い立ちました。

パーティー好きのシュピロ博士らしい
演出でした。

会場は 博士への期待であふれます。

ところが 思いも寄らぬことが起きました。

abc予想の証明に生涯をささげた
シュピロ博士。

この出来事以降
数学の表舞台に姿を現さなくなりました。

その後もabc予想は 数学者たちの挑戦を
ことごとく はねつけることになります。

アメリカを後にした望月博士。

日本での研究生活は
1992年に始まりました。

天才として知られた
望月博士にポストを用意したのは

京都大学 数理解析研究所。

日本の数学研究の中枢です。

ここで博士は
次々と斬新な研究論文を発表します。

中でも「グロタンディーク予想」と呼ばれる
難問の証明では

元の問題だけでなく
ほかの難問も合わせて解決。

世界を驚かせました。

1998年には 国際数学連合の総会に招かれ
自らの最新研究を講演。

将来 数学界を背負って立つであろう
若手だけに許される 栄誉でした。

京都大学のキャンパスに
一つのうわさが流れたのは

2000年を迎えた頃でした。

あの天才望月が
難問中の難問へのチャレンジを

始めたらしいというのです。

日本に帰国後 親交を結ぶことになった…

自らの研究について めったに語らない
望月博士と

2人だけでセミナーを
繰り返すことになった数学者です。

望月博士の挑戦は

まるで天国と地獄の往復を
何度も繰り返すようだったといいます。

なぜ abc予想は解けないのか。

思い出して下さい。

数々の難問を まるでドミノ倒しのように
解き明かす abc予想には

左側には たし算が

右側には かけ算が現れていました。

この数式を証明するためには

数学の世界に

混ざり合うように存在している

たし算とかけ算を
いわば分離するという

根源的な課題に切り込む必要がある
というのです。

このころから望月博士は

全く新しいアイデアを
頭の中で巡らせ始めます。

それは いわば
通常の数学の世界から飛び出し

これまでにない数学を
作り出そうとするものでした。

ある奇妙なアイデアを聞かされ
驚いたことがあるといいます。

望月博士は数学者がこれまで敬遠してきた
ある種の矛盾するような論理をも

試そうとしたというのです。

更に
「異なるものを同じと見なす」という

現代数学が掲げる
あの原理原則をも

見直そうと考え始めました。

一度 同じと見なしたものを
もう一度 異なるものだと考える

いわば 行ったり来たりできる
数学があってもいいのではないか

というのです。

現代数学の変革を目指す望月博士は

一体 どんな理論を
作り上げようとしているのか。

その全貌が姿を現すまでには
更に数年の歳月が流れることになります。

インターネットに突然
abc予想を証明したとする論文が

掲載されました。

タイトルは…

著者は アメリカを後にし
日本での研究生活を選んだ望月新一博士。

数学界は 驚きと興奮に包まれます。

世界中の数学者たちが
一斉に望月論文を読み始めます。

ところが その内容は
多くの数学者を戸惑わせるものでした。

数学全体を「宇宙」と呼ぶだけでなく

「劇場」「エイリアン」などといった

聞いたこともない単語が並ぶ
数学理論だったのです。

奇妙と言われた望月博士の理論。
それは どんなものだったのか。

数学者にとっても
難解なものなのですから

ここでは理論の出発点に限って
ごく単純化して ご紹介しましょう。

通常の数学の世界から飛び出し
新しい数学を模索し始めた望月博士。

数学の世界を飛び出しただけでなく

なんと 数学の世界を
もう一つ用意します。

この2つの数学世界は
全く同じものですが

仮に こちらを宇宙A こちらを宇宙Bと
名付けることにしましょう。

ちなみに この場合の宇宙とは

星や銀河が浮かぶ
本物の宇宙を指すのではなく

一つの数学世界全体を指す
望月博士独特の数学用語です。

そして この2つの宇宙に
ある仕掛けを施すというのです。

宇宙Aの数字と宇宙Bの数字を
こんなふうにつないでいくのです。

1は1と 2は4と 3は9と。

そう Aの数は それを2乗したBの数と
つながっています。

不思議な形でつながった 2つの数学世界。

では ここで かけ算をやったとすると
どうなるでしょうか?

え? 普通の数学世界ならともかく
変なつながり方をしてるんだから

かけ算なんて できるのかって?

ご心配はごもっとも。
でも とにかくやってみましょう。

例えば 7×8はどうなるか。

Aの中だけで考えるなら
ここは普通の数学世界ですから

当然 7×8は56になります。

でも 例のつながりまで考えると
どうなるか。

実は つながった宇宙には
もう一つの計算方法があるのです。

Aの7は Bの49につながり

8は 64につながっていますから

Aの7×8は
Bの49×64と一致するはずです。

答えは 3136。

では Bの3136は
Aのどの数字につながっているか

たどってみると…。

互いに2乗の数字と
つながっているのですから

たどりつくのは √3136。

でも これ実は ちゃんと計算すると
56に一致するんです。

最初の計算と
ちゃんと つじつまが合いました。

分かりましたか? つながった宇宙には
Aの中だけで考えた かけ算と

つながりまで考えた かけ算の
2つのかけ算がありますが

両方の答えが一致しますので

かけ算は つながった宇宙の中で
ちゃんと成立しているのです。

ではでは たし算はどうなるでしょうか?

宇宙Aでは 7+8は15ですが
つながりまで考えると…。

宇宙Bでは 49+64になりますから
Bでの答えは 113。

これをAに戻すと…。

2乗すると113になる数

つまり√113という 最初の15とは違う
変な数になってしまいました。

つまり2つの宇宙をつなげると

たし算は
つじつまが合わなくなってしまうのです。

望月博士が2つの宇宙をつなげた理由。

それは いわば
かけ算は ちゃんと成立するけど

たし算が成立しない そんな数学世界を
作りたいということだったのです。

abc予想証明のための望月博士の戦略。

それは いわば
かけ算だけが成立する世界を作って

たし算と切り離し その世界を出発点に
たし算とかけ算にまつわる難問

abc予想の証明にたどりつこうという

これまでになかった
アプローチだったのです。

数学の世界で最も重要だともいわれる
abc予想は 本当に証明されたのか。

2015年 望月理論について
徹底的に議論しようという

国際会議が開かれました。

集まったのは 望月博士を正しいと考える
数学者たちと

さまざまな疑問で
頭がいっぱいの数学者たち。

ここで問題となったのが

宇宙際タイヒミューラー理論が
出発点とした あの2つの数学世界でした。

全く同じものだと説明される
2つの数学世界。

しかし つながりまで考えると

こっちの4は 16につながっているのに
こっちの4は 2につながっています。

だったら 2つが同じとは言えない
論理が矛盾しているというのです。

議論は紛糾。

証明の核心へと迫る前に
会議は閉会となりました。

数学者同士が理解し合えない状況を
なんとか打開できないか。

一人の数学者が 数学界の期待を背負って
望月博士のもとを訪れることになります。

この年のフィールズ賞を受賞した
若きスーパースターでした。

来日したショルツ博士が問題にしたのは

やはり 望月理論が出発点とした
あの2つの数学世界でした。

全く同じものでありながら
異なるものとしても扱うという

一見 矛盾する論理展開を
どう考えればいいのか。

2人の話し合いは 数学がよって立つべき
原理原則はどうあるべきなのかを問う

激論へと発展していったのです。

はぁ~っ…。

会談のあと 2人がそれぞれ記した
会議録です。

「abc予想は まだ証明されていない」とする
ショルツ博士に対し

望月博士は「誤解が解けていない」と
書き記したのです。

望月博士による abc予想の証明。

論文の査読が完了してもなお

それが誤りだと捉える数学者が残るという
異常事態となってしまったのです。

さて 皆さん。

私たちは これまで 数学とは
一つ一つ 論理を積み上げていけば

誰もが同じ結論に達することができる
学問だというイメージを持ってきました。

しかし今回 abc予想の証明を巡っては

そんなイメージとは
かなり違ったことが起きています。

数学界に起きていることを
どう捉えればいいのか。

望月博士が証明を作り上げる過程を
見つめてきた加藤文元博士。

興味深い話をしてくれました。

数学者同士が理解し合えない
今の状況は

現代数学が新しい数学へと飛躍するための
何かの準備段階かもしれない

というのです。

今回の場合 やはり
対象に関する認識論なんだ

というふうに思います。

対象に関する認識論の違いが
互いの理解を阻んでいる。

一体 どういう意味なんでしょうか。

思い出して下さい。

数学は 異なるものを同じと見なす
という方法で始まり

発展してきたことを。

つまり 物事の異なる部分に
いわば 目をつぶり

同じと見なせる部分に注目し
認識することを

数学は 原理原則としてきたのです。

しかし 加藤博士は
このやり方は 人が日常生活の中で

実際に物事を認識する時のやり方とは
大きく違うといいます。

人間の思考は 2つのものを
同じものだと認識することもあれば

同時に全く違うものだと
考えることもあるという

いわば 矛盾をも包み込む
高い柔軟性を持っている。

だから数学も そうした柔軟な形へと
進化する道があっても

いいのではないかというのです。

かつての指導教官…

博士もまた これまでの数学との違いを
分かりやすく説明する言葉を

見つけてほしいと語ります。

論文発表から間もなく10年。

今 新たな動きが始まっています。

望月理論に未来の数学の姿を
見いだしているという若い数学者たちが

ネット上での議論を開始しました。

望月博士本人も動き始めました。

多くの数学者が理解できないとする
同じものでもあり 異なるものでもある

という論理展開を
詳しく解説する文章を公表。

更に自らの言葉で こんなメッセージを
数学界に発信しました。

abc予想を証明したという
宇宙際タイヒミューラー理論が

今後 世界の数学者に
広く受け入れられるかどうか。

それは まだ分かりません。

しかし もしこれが
新しい数学の夜明けなのであれば

私たちは今 史上まれに見る
知の大変革を目撃している。

そう言えるのです。

♬~