日本の話芸 柳家小満ん 落語「富久」[解][字]…の番組内容解析まとめ

出典:EPGの番組情報

日本の話芸 柳家小満ん 落語「富久」[解][字]

柳家小満んさんの落語「富久」をお送りします(令和2年12月18日(金)霞が関イイノホールで収録)

番組内容
柳家小満んさんの落語「富久」をお送りします(令和2年12月18日(金)霞が関イイノホールで収録)【あらすじ】幇間(ほうかん)の久蔵は「松の百十番」という富札を買い、神棚の中にしまっておく。半鐘の音で夜中に起きると、ひいきの旦那の店のあたりが火事、酒でしくじった久蔵はばん回のチャンスとあわてて駆けつける。火事は無事に収まり、見舞酒をたっぷり飲んで寝ていると、今度は久蔵の家のあるあたりが火事だと…
出演者
【出演】柳家小満ん

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

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  1. 火事
  2. 大神宮様
  3. 久蔵
  4. サイ
  5. ダメ
  6. 旦那
  7. 芸人
  8. 百両
  9. 一杯
  10. 大丈夫
  11. お前
  12. チャ
  13. バカ
  14. 千両
  15. 大変
  16. 町内
  17. 百十番
  18. 本家
  19. お宮
  20. ガラ

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

   ごあんない

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自分らしい生き方を
デザインしましょう。

♬~(出囃子)

え~ 柳家小満んでございます。

今日は 私の旧師匠 桂 文楽の
十八番中の十八番

「富久」でございます。

私の師匠は この噺を手に入れてから

もう10年近く 高座へかけなかった。

プログラムに載せても
当日やらなかったという それぐらい

念入りに練り上げた噺でございます。

え~ 及びもつきませんけども
今日は久しぶりでやらせて頂いて

師匠に感謝でございます。

♬~

(拍手)

♬~

(拍手)

これで 昔は 12月に入りますってえと

伊勢の方から 御師って者が
やってまいりまして

一軒一軒
大神宮様のお札を配って歩いたという。

ところが これがまた
裏長屋へ行きますってえと

ほかのおはらいで
きゅうきゅうとしておりまして

昆布屋でも 薪屋でも
町内の買い物は みんな

盆暮れの節季払いでございますから
その大詰めの12月ですから

もう 金算段で
きゅうきゅうとしておりまして。

伊勢屋の番頭 おはらいなどと来る
なんてえんでね

「へい 伊勢から参りました。 おはらいを」
なんてえんでね

御師みたいなことを言って
催促に来ると

そういったところでございましょうが…。

「おい そこへ行くのは
久さんじゃないかい」。

「おや こりゃどうも。
え~ 六兵衛さんじゃありませんか。

あなた 今 ここで何をなさってる?」。

「いや~ 何って 見てのとおり床店だよ。
今 富の札を売ってるんだよ」。

「あなたが? 富札を? いいねえ。
あなたはね 土台 福相だから。

あなたから買うとね
当たりそうな気がしますよ。

第一 あなた なりのこしらえがね 粋だ。
威勢はいいし」。

「相変わらずなんだな。
商売といいながら 筋者だな。

どうだい?
運試しに1枚買ってみないかい?」。

「私が? 頂いてもいいんですが
どういうことになってます?」。

「今度のはね 大きいんだよ。
湯島天神だ。

ああ あのね 大富が千両だよ」。

「千両? かぁ~ 夢のようですな」。

「二番富が5百両。 中富が3百両。

そのほか 2百両 百両 50両
いろいろとあるんだがね。 どうだい?」。

「へえ~ そうですか。
じゃあ 頂いてもいいんですが

どういう札が当たります?」。
「それは分からないよ。 運否天賦だから」。

「でもさ あなた売ってるんだから。
いわば商売人なんですから

商売人の勘でさ
こういう札が出るってえのは

あるんじゃありませんか?」。
「う~ん 久さん うまいこと言ったな。

そうなんだよ。 実はね ちょっとね
気になる札が1枚あるんだよ。

私がもらってもいいと思ってね
別にしといたんだがね

ここに こういう札があるんだよ。

松の百十番ってえんだよ。

こういう 木で鼻くくったような
そっけない札がね

事によったら
出るんじゃないかと思ってね」。

「はは~ いいねえ!
松の百十番 ぴ~んときましたよ。

じゃあ それ頂きます。
おいくらですか?

へっ 1分? あっ 分かりました。
あります あります ええ。

『古川に水絶えず』ってえんでね
芸人の端くれですがね あるんですよ。

ええ。 じゃあ これをだから へえ。
で これ なるほど 松の百十番。

ありがとうございます。
じゃあ これ 千両に当たりますね?」。

「いや 分からないよ」。 「分からないよって
あなた そりゃ気がないよ。

で もし当たらなかったら
あなたが いくらか立て替える?」。

「バカなこと言っちゃいけないよ。
立て替えやしないよ」。

「そうですか。
分かりました。 じゃあ 楽しみに。

ええ また ゆっくり お目にかかります。
へい ごめんください」。

…なんてえんで
これから うちに帰ってきました

たいこ持ち 幇間 久蔵でございますが

このお札を 大神宮様のお宮の中へ
これを入れまして

そして 近所の酒屋さんから
貧乏徳利で1升買ってくる。

こいつを神棚へ上げて
しきりに 拝んでおりました。

まずは お下がりってえんで
こいつを下ろして

で 大きな茶わんで
ぐびりぐびりと飲み始めたんですが

こいつが 飲み始めたら終わらない。

すっかり1升を飲みきって
もう へべのれけという。

「大神宮様 ええ すっかり…
ご相伴にあずかりまして

ええ いい心持ちになりました。

最前からね
しつこくお願いをしておりますがね

どうか ひとつ ええ 私のところへ
運を授けて下さいまし。

そのかわり 私はね…

私は 千両当てて頂こうなんて
そんなずうずうしいこと申しません。

ですから 私はね 二番富の5百両で
結構なんですがね お願いいたします。

5百両当たりますと 私はね
この際 もう 芸人をやめます。

たいこ持ちをね 廃業してね
で 堅気になる。

ってえのはね 表通りに
大神宮様 ご存じですかね

今ね 小間物屋の 売る店が
出てるんですよ。

店の品物が そっくりついて
これ 230両ってえんですから

ですから
これは 30両 私は値切りますよ。

値切った30両で 大神宮様のお宮を
立派にこしらえますから

どうか ひとつ お願いをいたします」。

(いびき)

独り者の気散じでございますから
前 のめるってえとグ~ッと寝てしまう。

12月の半ばでございまして
筑波おろしという 風がピュ~ッと。

「おおっ おお うたた寝しちゃった。

ああ… ハクション!
おおっ これはいけねえ。

ハクション!
あ~ら 風邪ひいたら大変だ こりゃ。

面倒見てくれる者はねえんだからな。

おっ ぶつけてるよ。 2つ半だ。
何だろう? えっ?

あっ もつさん! 屋根上がってるんだ。
火事のようだね」。

「えっ 久さんかい? 今 見てるんだがね
どうも これは 芝見当だな」。

「あっ 芝見当ね。 ああ そうですか。
どうも えっ ありがとうございました。

芝見当 芝口の田丸屋さん。
あそこで 酒でしくじっちゃった。

まずいね。 神明のね 越後屋さん。
あそこも酒だよ。

ここんところね 軒並みだよ。

ああ こういう時にな 出入りが…。

あっ! そうだね
俺が これから駆けつけるよ。

『浅草阿部川町から参りました』。
『遠いところ よく来てくれたな。

よし 分かった。
今までのことは忘れてやるぞ。

明日から出入りをしろよ』とくりゃ
しめたもんだ。

もう一本 聞いてみよう。

もつさん あのね 芝は どの辺だい?」。

「そうだねえ。
金杉手前 神明居回りってところだな」。

「えっ 神明居回り? よっ しめた!」。

「何だい? しめたってのは」。
「えっ どうも ありがとう」。

奴さん 我が家へ入るってえと
すっかり火事装束をつけて

ちょうちんの焦げるのも気が付かない
横っ飛びになって やって参りました。

「旦那 こんばんは
お騒々しいこってござんすね」。

「誰だい? 誰…。 何だい その

天水桶のところでもって
ぶっ倒れてんのは。

あっ 何だ おめえ 久蔵じゃねえか」。

「へえ。
お手伝いにあがりましてございます」。

「はあ~ 阿部川町から来てくれたか。
うれしいよ。

よ~し 分かった。
今までのことは 忘れてやらあ。

明日から出入りをしろよ」。
「ありがとうございます。

それが こっちのつけめ…」。
「何だ?」。 「いえいえ…。

旦那 すいません。
じゃあ 早速 働かして頂き…」。

「いいんだ いいんだ。
お前が来てくれただけで。

芸人だ。 怪我でもするといけないからな
邪魔にならないように脇へ寄ってろ」。

「何を言ってるんですよ。
私は お手伝いに来たんですから

働かせて下さい。 あっ ちょいと ちょいと
そのつづら 私が背負いいたします。

また どいて どいて。 いや 私ですよ。
私に背負ってくれと言ってますよ。

ねえ ですから大丈夫。
芸人をしておりましたもんで

こういう時は力が出るもんですからね。
だけど これだけじゃなんですから

そこにね おつな火鉢があるでしょ。
その桐の。 いとまさの。 ええ。

その火鉢も のせちゃって…。
いえいえ 大丈夫ですよ。

私のね 力をご覧に入れよう。

それから ひょうたん ひょうたん。
ひょうたん いいつやだ。

それもね 突っ込んじゃって 火鉢に。
大丈夫ですよ ええ。

かぁ~ 芸人をしておりましてもね
お家の… 大事と… 知った… 時…。

あっ… ハアハア… う~んと…。

あの どなたか つづらの蓋を取って
中のものを出して…」。

「何だよ。 それじゃ役に立たない」。
「何をするんで…」。

「何だ しょうがねえな。
へたばっちゃったよ まったく。

まあ 役立たず…。
へえ 何ですか? 消えた?

ああ そうですか。
ありがとうございます。

お互いさまに おめでとうございます。
ありがとう。

おい あのな 火事が消えた。 湿ったよ。
頭 荷物 出しちゃいけないよ。

火事が消えたって。
おい 久蔵 何をしてるんだよ?

火事が消えたってさ」。
「そうですか そうですか。

ああ くたびれた」。
「うそつけ。 何もしてねえ…。

あっ どうも ありがとう存じます。
おはやばやと。

ええ こちらからも後ほど ご挨拶に。
えっ ありがとう存じ…。

久蔵 じゃあな お見舞いに来てくれた方
お前は顔が広いんだから帳面つけてくれ」。

「あっ さようで… 分かりました 私が。
帳面の方は任して下さい。

私は どっちかってえとね
筆は立ちますから ええ。

筆の方で ひとつ
ええ お手伝いをさせて頂きます。

今 お見えになったのは ご町内の方?
ああ そう ご町内… 八百定さん。

八百定さんと三河屋さん。

あっ どうも ありがとうございます。
ありがとう存じます。

おはやばやと。
ええ どうも おめでとうございました。

ありがとう存じました。
ありがとう存じました。

伊勢乙さんですな
乾物問屋の伊勢乙さんで。

あっ どうも ありがとうござ…
旦那 ご本家からも来て下さいました。

あっ 頂戴物を まあ たくさんに。
ありがとうござい…。

いや~ 私ね しくじってたんですがね

火事で駆けつけて
お詫びが かなったんですよ。

ですから ええ ご本家の方へも
後日 ご挨拶に伺います。

よろしく…。 ありがとう存じました。

ご本家 石町さん 石町さんと。

旦那ね
ご本家から頂戴物いたしましてね

こちらはね これはね お重詰めですな。
こちらがね 2本 徳利が。

おっ 待ってくれ。 こっちは冷やですが
こっちは どうやら

お燗がついてるような。 このさなかに。
これ どうしましょう?」。

「そっち やっときなよ」。
「ああ そうですか。

ありがとう存じます。 ありがとうござい…
ありがとう存じます。

え~っと 和泉屋さんで…。
和泉屋さんでございますか。

旦那ね このご本家からね
お酒なんですがね

お酒がね… お燗がね 台なし…」。
「何だ そんなことばかり言って

飲みたいのか? しょうがない。
お前 酒でしくじったんだぞ。

そこんとこ考えて
しくじりのないようにして飲めよ」。

「エヘヘ… あいすいません。
いや 頂けた義理じゃないんですけどね

駆けつけた時には ポッポしてた。

今になって急にね
ゾクゾクってしてきたもんですから。

あっ すいません お清さん。
湯飲み茶わん…。

ええ 湯飲み茶わんがいいんですよ。
じゃあ 私は ええ 失礼して

ちょっと あの 一杯だけ。
ええ これで ええ 頂かして頂いて。

すいません どうも。 ありがとう…。

あっ そうだ。 ちょいと あの 番頭さん
やりませんか? ああ そうですか。

頭 どうですか? それどこじゃない?
何だな~。

誰か ここへ 車座になりませんか。
私一人で きまりが悪い。

じゃあ いただきます。 どうも」。

(飲む音)

「ああ~! ああ~ あっ ああ うまい。

今ね あのね キュ~ッとね 入ってね

あの… 旦那によろしく言ってました。
ヘヘヘ。 じゃあ…。

あっ どうも ありがとうござい…。
いや~ これで 一息つけた…。

ありがとうございます。
え~っと 近江屋さんでございますな。

元結屋の近江屋さんで…。

それじゃね
これ もう一つね もう一つ…。

ヘヘヘ… ええ いえいえ 大丈夫です。
心得てますから。

そう しくじることはありません。
そうだ このね お重詰め

ちょいと これ どんなもんか
開けてみようじゃありませんかね。

蓋を取って… あ~ どうです? 皆さん。
これ のぞいてごらん。

おでん おでん。
おでんを総じまいにしてね

これ 串に刺したところがね
気が利いてますね。

石町辺りは 夜通し ねえ
食べ物屋さん 出てますからね。

あ~ これだ! これがいい。

目刺し 目刺し。
これね なんごのわたぬき目刺しってね

これは ヨシで目を通してあるんですから
ねっ 粋な。

うん! うん! こういう時はね
こういうものがいいですね。

かぁ~っと ひとしおでね」。

(飲む音)

「あっ どうも ありがとうござい…
ありがとうござい…。

忙しくなってきたな これはな。
えっとね 誰か つけてくれませんかね。

ええ まあ いいやね。 加賀屋さんですね。
加賀屋さんでございますね。

うん。 うん!

いや~ これね あの これ やっぱりね
このね あのね…」。

(飲む音)

「ああ。 じゃあ こうしましょう。
こうしましょう。

あのね 筆を この辺でね
めでたく おさめましょう。

『ご町内の方々』と。 ねっ こんなことで
ひとまず筆を…。 で もう一杯」。

「もう一杯?」。 「いいじゃないですか。
何 言ってんだよ。

駆けつけ三杯… ってんですよ。

こっちはね
阿部川町から駆けつけたんですから。

もう一杯ね。 はいはい はいはい。

今度は ひとつね 落ち着いてね
飲まして頂きましょうよ。

ねえ 皆さん。 聞いてますか?
いや~ 私ね うちで寝てたんですよ。

ちょいと一杯 飲みの ええ。
そしたら 目が覚めてね

ガチャンってえんでね ええ。

『火事どこです?』っつったらね
芝だって。

『芝の どの辺です?』っつったら
ええ 神明居回りと聞いたんで

よし しめた! いやいや 『しめた』なんて
言いませんよ。 『しまった』って。

さあ 大変だってえんでね
それでね 駆けつけたんですよ。

ええ 本当に。 ええ もうね…」。

(飲む音)

「煙が地をはってましたから
こいつは いけねえかなと思ってね

それでね やっとのことでね
ご当家へたどりついて

『旦那 お手伝いに』っつったらね
旦那がね

『あ~ お前か。
遠いところを よく来てくれたな。

よし 今までのことは忘れてやるぞ。
明日から出入りをしろよ』ってね

ええ お詫びが かなっちゃった。

火事のおかげですよ。 ねえ。

それで 『お手伝いを』って
『いいんだ お前は手伝わなくても…』」。

(飲む音)

「『お前は芸人なんだから怪我さえしなきゃ
いいんだから』ってえんでね

なかなか これは
言えるこっちゃありませんよ。

そうでしょ? ねえ? うん だから

こんなね… こんなね うれしいことは
ないと思ってね 本当に まったく…」。

(飲む音)

「アハハ…。 あんまりね うれしくて
めでたいから じゃあ もう一杯」。

「もうダメだ。 もうそれぐらいにしとけ。
もう あとは しくじり…」。

「ああ そうですか。 分かりました。

じゃあ これで
おつもりにさせて頂きます。

じゃあ 皆さんで。
こっち お燗の方は ちょいとね

上の方が 少~し少なくなりました。
ご勘弁下さい。

こっちは冷やで。
それから このね お重詰めと。 ねっ。

皆さんで召し上がって。
じゃあ ひとつ この辺で働きましょう。

ちょいと! お客さん お客さん。

いいね たすきがけで大きな箱を持って
奥蔵へ納める? ああ そう。

何? 箱の中は。 えっ お皿?
ホホホ… 本当っすか? あなた。

いいね お菊さんが
奥蔵へ皿を運ぶなんて あんた。

あなたに粗相があっちゃいけない。
あたし あたし あたし…。

『播州皿屋敷』ときたよ あんた ええ。
知ってますか? ねえ。

あのお芝居でね
あそこの鳴り物がいいんですよ これ」。

♬「チャ~ン チャチャ チャ~ンチャ~ン
チャ~ン チャチャ チャ~ン」

と きやしょう。
♬「チャ~ン チャチャ チャ~ン」

「おいおいおい 浮かれてるよ。
あ~っと!」。

「あいすいません」。
「あいすいませんじゃないよ おい。

どうしたい?」。
「へえ へえ… 大丈夫です」。

「いや お前の体じゃねえんだ。 皿の方だ」。
「何だい。 麹町の旦那だねえと。

え~ 皿は どうやら増えた」。
「増えたじゃないよ。

だから よせよせ言ったんだ。
お前 もう 少し寝なさい」。

「ああ そうですか あいすいません。
じゃあ 皆さん お先に。 おやすみなさい」。

何しに来たんだか分からねえ。

帳場格子の内へ入るってえと
グ~ッという高いびきでございまして。

「いや~ みんな ご苦労だったね。
よく働いて。 じゃあ 一休みしとくれ。

あ~ もうな 番頭さんね
ご本家から頂いたのがあったろ。

それ あっためなくったってもいいからさ
みんなで それでね 一杯飲んで。

炊き出しは 今
お清にさせてるけどもね。

いや~ いっときはな
火の粉がな 飛んできたから

どうなるかと思ったが
いいあんばいに…。

おや? 何だ また ぶつけてるぜ。

誰だ? 屋根上がったの。 千太郎か?
早いな。 どっちだ? 火事は。

えっ 浅草見当?
番頭さん 浅草見当だってよ。

取り引き先は なかったかな。

浅草の どの辺だ? えっ 鳥越居回り?

あっ 久蔵が来たの あれ 阿部川町だよ。
あれ 起こしてやんな」。 「さようですか」。

「おい 久さん 起きてくれ。 久さん」。
「さようですか。

じゃあ せっかくですから もう一杯」。
「まだ飲む気だね。 火事だよ」。

「火事は牛込。 ええ。

神楽坂 牛が焼けたら もう(モウ)大変」。

「何をのんきなこと言ってんだよ。
お前 阿部川町だろ。

鳥越居回りが火事だってさ」。
「えっ! 鳥越い… 居回り?

さあ 大変だ。
こんなことしてる場合じゃねえ。

じゃあ 私は…」。
「おい ちょいと待ちな。 待ちな

おい あのな ろうそく別に2本ばかり
持たせてやってくれ。

いいかい?
おい 久蔵 そんなことはないぞ。

まあ そんなことは まずないだろうけど
万が一の時には

よそへ行ってくれるなよ。
まっすぐ 私んとこへ帰ってこいよ。

いいな」。
「へえ ありがとうございます。

じゃあ 皆さん あとお願いします。

はあ~ これは驚いたね。

ええ これ 飲んで寝るとね
火事になるんだからな。

まあ こんな火事の多い晩ってえのは
ないね。

サイ サイ サイコラサ!
サイ サイ サイコラサ!

火事の掛け持ちをしようとは
思わなかったな。

サイ サイ サイコラサ!

はは~。 なるほど 悪い方…。

サイ サイ サイコラサ!
サイ サイ…。

すいません ちょっと通して下さい」。
「ダメダメ ここから先はダメだい」。

「ダメだったって通して下さいよ」。
「何だい 久蔵じゃねえか。

どこへ行くんだい?」。
「どこへ行くって あ… あたしのうち」。

「おめえのうち?
おめえのうちは もうない」。

「ない!? 誰が持っていった?」。
「持っていきゃあ しねえよ。

もう丸焼けだよ」。
「ま… 丸焼け!? 火元は?

えっ 糊屋のばばあ?
あのばばあ 畜生め!

ふだんから しみったれて

爪の先でもって
火とぼすようにしてやがって。

さては あの爪の火が ポォ~ッ…」。

「どうしたい?
えっ 久蔵が 帰ってきた?

あ~ どうした? 焼けた? 丸焼け。
そうか かわいそうにな。

俺んとこに来てな。 うん。

まあいい。 心配するな。
なんとかしてやるからな。

ブラブラ うちで遊んでろ それまで」。

「旦那
どうぞ よろしくお願いをいたします」。

そこは 芸人のありがたいところで

何不自由なく
やっかいになっておりましたが

暮れも
かなり押し迫ってまいりまして…。

「ああ 久蔵 こっちに来てくれ。
お前のことが後回しになってな

気の毒したがな
あのね 奉加帳をこさえといた。

これを持ってな
行き先も ちゃんと書き留めてあるから

順に回りゃあな
1軒うちが持てるぐらいのお金が

集まるだろうからな。

で このな 裏書きにな
ひと言 書いといた。

『座敷浪人 久蔵儀 祝融の罹災につき
ご喜捨のほど 御願い候。

越前屋善兵衛 ともども火の用心』と
書いてな。

で 私が初筆 1両つけといたから
これで ずっと回ってくるといいよ」。

「ありがとうございます」。
「遅くならないで帰ってきておくれ」。

「承知いたしました。
ありがとうございます。

ありがたいな ええ。 ここまで
考えててくれようとは思わなかったな。

いや~ 何だよ。 おい 大変な人だね。

すいません 何ですか?
この… 天神様で? お祭りですか?」。

「お祭りじゃありませんよ
富… ですよ」。

「富… あっ そうだ 千両富。
そういや 俺も1枚買ってたんだ。

どうせ当たりゃしねえ。
だけど 様子だけ見てみるか。

あ~ すごいな。 すいません あの
もう だいぶ突きましたか?

ああ そうですか。 えっと
松の百十番ってえのありません?

ない? ああ そうですか。
えっ これから? 千両?

じゃあ 取っといてくれたんだ。
これからですか 大富。

いや~ 楽しみだな。 偉い人だな」。

「ちょんちょ~ん」と柝が入ります。
呼び出し奴のような者が出てまいり…。

「今日のお突き止め~。
今日のお突き止め~」。

ガラ~ン ガラ~ン ガラ~ン ガラ~ン。

木札の入った箱を
2人がかりで揺すっておりまして

3尺7寸5分という長い錐でもって
ト~ンと突き上げたやつを

寺社奉行に いっぺん見せたやつを…。

「松の百十ば~ん 松の百十ば~ん」。
「あ~ あったったったった!」。

「何だ この人は ひっくり返っちゃったよ。
おい 大丈夫かい?」。

「大丈夫です。 お構い下さ…。

六兵衛さん!」。 「待ってたんだよ 久さん。
当たったよ ええ。 大富だい」。

「ありがてえ。 もうね 借金だらけでね
もう 町内 顔出しもできねえんだ。

困ってたんだ。 すぐもらいてえんだ」。

「すぐもらいてえは いいけどね
今はよしなよ。 来年2月まで待ちなよ。

今だってえとね 損がいくよ。
ご奉納金1割。

お立て替え料1割ってんで2割…」。
「いいよ いいよ。 千両あるんだから

2割引かれようと 3割引かれようと
驚きはしねえんだよ。

5割引かれようと10割引かれようと
おめえ さあ 殺せだ」。

「何だよ おい。 威勢がいいな。
承知なら もらってきてやる。

じゃあ 札をお出し。 札」。
「札? 札… ポォ~ッ」。

「何?」。 「ポォ~ッ…」。

「えっ 火事で焼いた!? バカだな 久さん。
えらい そら ダメだ。 ダメだい そら」。

「何です あなた。 脅かしっこなし…
ダメだってことはないでしょ あなた。

松の百十番 あなたが売って
私が買ったんでしょ。 ねっ。

売った者と買った者って
ここに一両人がいるんだから

それでいいじゃありませんか」。
「そら そうだよ。 そら そうだけど

お上のやってることだからね
肝心の手形になる札がなきゃね

そら もらうわけにいかない。
それ ダメなんだよ」。

「そんなバカな…
あなたが売って 私が買ってさ

おんなじ札が
に… 2枚あるわけがないんだから

いいじゃありませんか」。
「そら 何べん言っても そうなんだよ。

だけどね 手形の札がなきゃ
そりゃ 久さん ダメだよ」。

「分かりました。
じゃあね あのね まけます。 5百両に」。

「5百両が2百両でもダメだよ」。

「そんな… あなたが売って 私が買って
売った者と買った者…。

ここにいてさ ねえ…。

それじゃあね 私はね 今 居候ですからね
うちさえ持てりゃあ いいんですからね

じゃあ ギリギリ 20両」。
「20両が… 十が びた一文 ダメだよ」。

「びた… びた…。

いらねえやい!」。 「何だい? 何だい?」。
「何を言ってやんでえ!

首くくりの足引っ張るような
まねしやがって。

俺 先に死んで てめぇ 取り殺すぞ!」。
「おい バカなこと言っちゃいけないよ」。

「畜生め 情けねえな」。

「おお どうしたんでい 久蔵じゃねえか」。
「ああ どうも。 頭でございましたか」。

「頭でございましたかじゃねえや。
お前くらい のんきな男はねえな。

火事だってのに
寄りつかねえじゃねえかよ。

灰ぐらい おこしに来いや おめえ。
早速 困るだろうと思って

布団と釜 俺のとこにあるからな。
取りに来いよ」。

「へえ。 ありがとうございます」。
「おい 何をよろついてるんだよ。

でもな おめえはな 感心したな。
やっぱり芸人だ。

いい大神宮様だな。 あのお宮。

あれも 俺んとこの神棚で
同居してるからな」。

「何? 大神宮様のお宮がある!?」。

「何だい? 何だい?」。
「泥棒!」。 「何だい? 泥棒って。

よせ よせ。 バカ バカ。
俺が とったんじゃねえ。

預かってあるんだよ コンチクショー。
大変な力… 離せよ! ついてこい。

おい 今 そこで久蔵に会ったら
気がふれてやがるんだよ。

布団と釜 渡してやれ。
さあ 布団と釜 持ってけ」。

「こんなもの いるかい。 畜生め。
大神宮様は? 大神宮様は?」。

「大神宮様は おめえの頭の上だい。
勝手に下ろして持ってけ」。

「もう 腰が抜けて立てねえや」。
「だらしがねえな。 下ろしてやれ。

さあ それが おめえの大神宮様だ。
持ってけ」。 「持ってかなくってよ。

チクショー。 頭 まだだぞ。
このお扉開けて 札があればよし。

もしも なかったら…」。
「変なこと言っちゃいけねえよ。

手はつけてねんだよ。 何が入ってるんだか
知らねえ。 よく見てくれ。

ああっ… 頭 ありがとうございます!

ええ これ… これがね
湯島天神の千両富 松の百十番で

ここに入れといたんです」。
「えっ そのお宮の中に?

なるほど。 これは当たり前だ。

コノヤローが お株を起こしやがった。
この暮れへ来て。

おめえはね
何だかんだで人間が正直だから

『正直の頭に神宿る』っていうのは
これだ。

おい 千両 この暮れに どうするよ?」。

「ありがとうございます。
これも大神宮様のおかげでございます。

ご町内のお払い(お祓い)を
いたします」。

(拍手)

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